事業融資を検討するとき、金利の数字だけを見て「制度融資のほうが金利が低いから得だ」と判断してしまうと、 実際の負担を見誤ることがあります。制度融資には信用保証協会への保証料が別途かかるため、 金利が低くても総コストではプロパー融資とあまり変わらない、というケースも珍しくありません。
この記事では、プロパー融資と制度融資それぞれの毎月の返済額と総コストをシミュレーションで比較しながら、 事業融資を選ぶときに確認しておきたいポイントを解説します。
プロパー融資と制度融資のどちらを選ぶべきかは、金利の数字だけでなく、資金の使いみち・決算の状況・ 何を優先するか(スピード、実質コスト、通りやすさ)によって変わります。 まずは3つの質問で、検討する価値が高い調達先の候補を確認してみましょう。
資金の使いみち・決算の状況・重視することを選ぶと、 プロパー融資・制度融資・日本政策金融公庫など、検討すべき調達先の候補を確認できます。
借入希望額・返済期間・それぞれの年利・信用保証料率を入力すると、 毎月の返済額と、保証料を含めた総コストの概算を比較できます。
同じ借入額・返済期間でも、保証料の有無によって総コストがどれだけ変わるかを比較できます。
「事業融資」とひとくちに言っても、借入先は大きく分けて「プロパー融資」「信用保証協会付きの制度融資」 「日本政策金融公庫」「マル経融資」「ビジネスローン(ノンバンク)」の5系統があり、 プロパー融資の中にもメガバンク・地方銀行・第二地方銀行・信用金庫・信用組合・商工中金など、 取引金融機関の種類によって融資姿勢やスピード感が変わります。
| 調達先 | 審査の主体 | 審査の段階数 | 別途コスト | 向いている状況 |
|---|---|---|---|---|
| プロパー融資 (メガバンク・地銀・第二地銀・信金・商工中金) |
取引金融機関のみ | 1段階 | 基本的になし | 決算内容・実績が良好な企業 |
| 制度融資 (信用保証協会付き) |
自治体窓口→信用保証協会→金融機関 | 2〜3段階 | 信用保証料(自治体の補助がある場合も) | 実績が浅い・自治体の利子補給を使いたい企業 |
| 日本政策金融公庫 | 公庫単独 | 1段階 | 基本的になし | 創業間もない・小規模事業者でスピードも欲しい場合 |
| マル経融資 | 商工会議所等の推薦+公庫 | 2段階(経営指導を含む) | 基本的になし | 無担保・無保証人・低金利を優先したい小規模事業者 |
| ビジネスローン(ノンバンク) | ノンバンク単独 | 1段階 | 基本的になし(金利が高め) | 審査スピードを最優先したい場合 |
制度融資は、都道府県・市区町村・信用保証協会・金融機関の4者が連携する仕組みです。 多くの場合、まず区役所・市役所の産業振興課などの窓口に相談し、要件を満たしていれば 「あっせん書(認定書)」を発行してもらいます。このあっせん書を持って初めて、 信用保証協会・金融機関への申込みに進める、という流れです。
つまり制度融資の審査は、①自治体窓口でのあっせん→②信用保証協会の保証審査→③金融機関の審査、 という最大3段階になります。これに対して日本政策金融公庫は公庫単独の審査で完結するため、 一般的には制度融資より日本政策金融公庫のほうがスピーディーに実行されるケースが多くなります。 「保証協会がついているから安心・早い」というイメージだけで選ぶと、 実際の所要期間を見誤ることがあるため注意が必要です。
プロパー融資・制度融資以外の選択肢もあわせて確認したい場合は 資金調達方法の選び方 をご覧ください。
制度融資は金利の数字だけ見ればプロパー融資より有利に見えることがありますが、 信用保証料を加えた総コストで比較すると、差が縮まったり逆転したりすることがあります。 一方で、プロパー融資は保証料が不要なため、名目金利が制度融資よりやや高くても、 総コストでは同等かむしろ安くなることがあります。
また、自治体によっては制度融資の利用者に対して利子の一部を補助する「利子補給」や、 信用保証料の一部・全部を補助する制度を設けている場合があります。 こうした補助を受けられる場合は、制度融資の実質金利がプロパー融資より大きく下がることもあるため、 区役所などの窓口で自社が対象になる補助制度がないか、あわせて確認する価値があります。
プロパー融資は保証料がかからない代わりに、決算内容や事業実績に基づく審査が厳しくなるため、 「そもそもプロパー融資の審査に通るかどうか」という前提条件も含めて検討する必要があります。 実績がまだ浅い場合は、金利差よりも「借りられるかどうか」を優先して制度融資や日本政策金融公庫を 選ぶ判断も現実的です。
同じ「事業融資」でも、運転資金(仕入・人件費など日常の支払いに充てる資金)と、 設備資金(機械・店舗・不動産など長期間使う資産の取得資金)では、適した調達先や条件が異なります。
資金使途を明確にしないまま申し込むと、希望する返済期間の条件で審査が通らないこともあるため、 「何のために・いくら必要か」を先に整理しておくことが重要です。
プロパー融資と制度融資を両方利用している場合や、既存の借入に新しい融資を追加する場合は、 それぞれの返済額を合計した「毎月の返済負担の総額」を把握しておくことが重要です。 個別の融資ごとに試算するだけでなく、複数の借入をまとめて管理できるツールを使うと、 資金繰り全体への影響を確認しやすくなります。
借入額・金利・返済期間を入力するだけで、毎月の返済額と返済スケジュール を試算できる無料ツールです。 申し込む前に、資金繰りにどれだけの負担がかかるかを具体的に確認できます。
借入が増えても、返済が進むほど残高は着実に減っていきます。
事業融資を選ぶときは、金利の数字だけでなく、審査の段階数(スピード)・保証料を含めた実質コスト・ 資金の使いみち(運転資金か設備資金か)を合わせて比較することが重要です。 プロパー融資は保証料がかからない分審査が厳しく、制度融資は保証料がかかる代わりに通りやすいものの、 区役所などのあっせんを経る分、日本政策金融公庫より時間がかかりやすいというトレードオフがあります。 自治体の利子補給・保証料補助の有無もあわせて確認したうえで、自社の実績や状況に合った選択をしましょう。 複数の融資を組み合わせる場合は、返済スケジュール全体を一度に確認できるツールの活用もおすすめです。