国民性とは|文化人類学ではどう説明されるか

「日本人は勤勉」「イタリア人は陽気」――こうした国ごとの気質の イメージは「国民性」と呼ばれ、旅行や国際交流、海外との ビジネスの場面でもたびたび話題になります。本記事では、国民性とは 何か、学問の世界ではどう説明されているのかをまとめました。

国民性とは

国民性とは、ある国・民族に共通して見られるとされる、性格・ 価値観・行動様式の傾向のことです。英語では "national character" と呼ばれます。ただし、これは一人ひとりの性格を 決めつけるものではなく、あくまで「その国の文化的背景から 生まれやすい傾向」を指す言葉です。同じ国の中でも個人差は大きく、 国民性はあくまで大まかな見取り図として理解するのが適切です。

文化人類学における「国民性研究」

国民性を学術的に扱う分野として、20世紀半ばに文化人類学の 一分野として「国民性研究(national character studies)」が 盛んになった時期があります。代表的な例が、アメリカの 文化人類学者ルース・ベネディクトが1946年に著した『菊と刀』 です。同書は、第二次世界大戦中に敵国であった日本人の思考様式を 理解するために書かれたもので、「恥の文化」という捉え方で 日本人論を展開したことで知られています。

もっとも、こうした国民性研究は「一つの国の人々を単一の型に 当てはめすぎている」という批判も学術的に受けており、現在では 国民性を絶対的な分類として扱うのではなく、あくまで文化的傾向の 一つの見方として相対化して捉えるのが主流の考え方です。

国民性が生まれるとされる背景

要因 内容
歴史・統治体制長く続いた王政・封建制度・植民地支配などの歴史が、価値観や人間関係の作法に影響するとされる
宗教・信仰多数派の宗教の教えが、時間感覚・家族観・食習慣などに反映されやすい
気候・地理寒冷地か温暖な地域か、島国か大陸かといった環境が、生活リズムや対人距離に影響するとされる
教育制度集団を重視する教育か、個人を重視する教育かの違いが、コミュニケーションスタイルに影響するとされる

国民性を扱ううえでの注意点

国民性は、異文化を理解する入り口として役立つ一方、使い方を 誤ると「〇〇人は皆こうだ」という決めつけ(ステレオタイプ)に つながる危険もあります。国民性はあくまで傾向であり、個人差の方が 大きい場合も多いことを踏まえたうえで参考にすることが大切です。 実際に外国人スタッフと関わる場面での注意点は 外国人スタッフと働くときに知っておきたい国民性・マナーの違い で解説しています。

まとめ

国民性は、歴史・宗教・気候・教育制度などから生まれるとされる、 国ごとの文化的傾向です。文化人類学でも研究対象とされてきましたが、 現在は「一つの型に当てはめすぎない」姿勢が重視されています。 異文化理解の入り口として、決めつけにならないよう気をつけながら 活用しましょう。